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COLUMN
コラム

2025/07/28

フランチャイズ業界M&A動向の実態〜2025年上半期データから読み解く業界変革

人手不足問題と事業承継課題が促進する業界再編の現状分析

2025年上半期、フランチャイズ業界ではM&A(企業買収・合併)を活用した戦略的な事業展開が注目を集めています。特に人手不足関連倒産が過去最多を記録する中、フランチャイズコンサルタントの視点から見ると、M&Aは単なる規模拡大手法ではなく、業界が抱える構造的課題への戦略的対応として重要な意味を持っています。

2025年上半期M&A市場の全体概況

全体的な市場動向

M&A市場の基本データ:

  • 2025年1-6月期の件数: 2,509件(前年同期比7.1%増、過去最多更新)
  • 2025年1-6月期の金額: 20兆7,173億円(前年同期比約2.1倍の大幅増)
  • 2025年1-3月期の件数: 1,171件(前年同期比0.3%増)

この数字は、M&A市場が件数・金額ともに堅調な成長を続けていることを示しており、特に金額面での大幅な増加は大型案件の増加を示唆しています。

フランチャイズ業界特有の動向

フランチャイズコンサルタントとして多くの案件を見てきた経験から言えば、2025年のフランチャイズ業界M&Aには以下の特徴があります:

  • 大手企業による中小FC買収の活発化
  • 事業承継型M&Aの増加
  • デジタル化対応のための統合

M&A活発化の背景要因

1. 深刻化する人手不足問題

統計データが示す厳しい現実:

  • 2025年上半期の人手不足倒産: 202件(2年連続で過去最多更新)
  • 東京商工リサーチ調査: 172件(前年同期比17.8%増、上半期最多)
  • 全体倒産件数: 4,990件(前年同期比1.19%増、11年ぶり高水準)

この人手不足問題は単なる労働力確保の課題を超えて、事業継続の根本的な危機となっています。

M&Aによる解決アプローチ:

  • バックオフィス機能の統合:重複業務の削減による効率化
  • スケールメリット活用:人材プールの統合と最適配置
  • システム化・自動化:省人化オペレーションの実現

2. 事業承継問題の深刻化

フランチャイズ業界では、中小規模の本部や加盟店において後継者不在が深刻な問題となっています。

主な課題:

  • 経営者の高齢化:団塊世代の引退時期到来
  • 投資負担の増大:デジタル化投資への対応困難
  • 競争激化:大手チェーンとの競争での劣勢

3. デジタル化・DX推進の必要性

技術革新への対応圧力:

  • AI・IoT活用:店舗運営の効率化
  • データ分析能力:顧客行動分析、売上予測
  • オムニチャネル戦略:オンライン・オフライン統合

具体的なM&A事例と傾向

外食産業での動向

「赤から」ブランドの展開強化: 株式会社甲羅が展開する「赤から」ブランドは、2025年7月のフランチャイズ・ショー大阪に出展し、加盟金0円キャンペーンを実施してFC加盟オーナーを積極募集しています。

この事例は、既存ブランドの拡大戦略としてのフランチャイズ展開と、M&Aによる事業統合の組み合わせを示しています。

業界別の統合傾向

小売業界:

  • コンビニ業界市場規模: 約12.8兆円(2024年、過去最高)
  • 特徴: 店舗飽和による統合圧力の増大

サービス業界:

  • 人手不足倒産の影響: サービス業での大幅増加
  • 対応策: IT化・自動化技術の導入加速

フランチャイズコンサルタントからの分析

M&Aがもたらすポジティブな影響

1. 経営効率の向上

統合効果による改善:

  • 管理コスト削減:本部機能の統合による重複コスト排除
  • 調達力強化:スケールメリットによる仕入れコスト削減
  • ノウハウ共有:成功事例の水平展開

2. 技術革新の加速

デジタル化の推進:

  • システム統合:効率的な店舗管理システム構築
  • データ活用高度化:統合されたデータベースからの洞察獲得
  • 新技術導入迅速化:投資負担の分散による技術導入促進

注意すべき課題とリスク

1. 企業文化の統合困難

フランチャイズコンサルタントとして多くの統合案件に関わった経験から、企業文化の融合は最も困難な課題の一つです。

リスク要因:

  • 異なる経営理念:本部方針の統一困難
  • 従業員のモチベーション低下:変化への抵抗
  • 顧客サービス品質の一時的低下:オペレーション混乱

2. フランチャイズ加盟店への影響

加盟店が直面する変化:

  • 契約条件の見直し:ロイヤリティや加盟金の変更可能性
  • 運営方針の変更:統合後の新方針への適応
  • サポート体制の変化:本部組織再編による影響

地域・規模別M&A動向の特徴

大都市圏vs地方の違い

大都市圏の特徴:

  • 高額案件集中:技術系企業買収が活発
  • 業態多様化:新業態開発を目的とした買収
  • 競争激化対応:市場シェア拡大目的のM&A

地方部の特徴:

  • 事業承継型が中心:後継者問題解決が主目的
  • 地域密着性重視:ローカルブランドの維持・継承
  • 効率化優先:コスト削減効果を重視した統合

企業規模別の傾向

規模別の特徴:

大手企業(売上100億円以上):

  • 戦略的買収:新事業領域への進出
  • 技術獲得:DX推進のための投資
  • 国際展開:海外進出の足がかり構築

中堅企業(売上10-100億円):

  • 同業統合:競争力強化と市場シェア拡大
  • 垂直統合:サプライチェーン効率化
  • 地域展開:新エリアへの進出

今後の展望と予測

2025年下半期の予測

継続すると予想される動き:

  • 人手不足対応M&Aの継続的増加
  • DX推進目的の技術系企業買収
  • 事業承継型案件の安定的な供給

長期的な業界構造変化

5年後(2030年)の予測:

  • フランチャイズ業界の寡占化進行
  • 技術力による差別化の重要性増大
  • 新業態創出スピードの加速

10年後(2035年)の展望:

  • デジタル統合プラットフォームの確立
  • AI主導の店舗運営システム普及
  • 国際的なフランチャイズ統合の進展

フランチャイズ関係者への提言

フランチャイズ本部への戦略提案

M&A戦略の重要性:

  1. 自社ポジションの客観的分析:強み・弱みの明確化
  2. 統合シナジーの具体的計画:定量的効果の事前試算
  3. 企業文化統合への配慮:ソフト面での統合計画
  4. 加盟店への丁寧な説明:変化に対する不安解消

競争力維持のための要件:

  • 独自性の確立:他社との明確な差別化要素
  • 財務基盤の強化:M&A資金確保と財務健全性
  • 人材育成投資:統合後の組織運営能力向上
  • 技術投資継続:デジタル化への継続的対応

加盟店への影響と対策

フランチャイズコンサルタントとして加盟店にアドバイスする重要ポイント:

M&A発生時の対応方針:

  1. 契約内容の再確認:権利義務関係の変更可能性確認
  2. 新体制との積極的関係構築:コミュニケーション重視
  3. 業績向上への取り組み強化:統合効果の活用
  4. リスク管理体制の見直し:変化への柔軟な対応準備

まとめ:変革期のフランチャイズ業界

2025年上半期に観察されるフランチャイズ業界でのM&A活発化は、人手不足の深刻化と事業承継問題という2つの構造的課題への戦略的対応として位置づけられます。

重要なポイント:

✅ 人手不足問題の深刻化:過去最多の人手不足倒産がM&A促進要因
✅ 事業承継課題の解決:後継者不在企業の大手傘下入り加速
✅ 効率化・統合効果:規模拡大による競争力強化
✅ 技術投資の分散:デジタル化投資負担の軽減

フランチャイズコンサルタントとして見ると、この動きは業界全体の健全性向上と持続可能な成長基盤の構築に寄与する可能性が高いと考えられます。

ただし、成功の鍵は統合後のシナジー創出加盟店との信頼関係維持にあることを忘れてはなりません。M&Aを単なる規模拡大手法として捉えるのではなく、業界全体の価値向上と社会課題解決に資する戦略的ツールとして活用することが重要です。

変革期にある業界において、変化を機会として捉え、積極的かつ慎重な戦略展開を行う企業が、次の成長ステージでの勝者となるでしょう。



  1. 2025年1-6月期のM&A件数、2509件で最多更新 – MARR Online 
  2. マーケット情報- クロスボーダーM&A 株式会社レコフ 
  3. 人手不足倒産の動向調査(2025年上半期) – 帝国データバンク 
  4. 1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 – 東京商工リサーチ 
  5. 企業倒産、11年ぶり高水準 4990件 – 毎日新聞 
  6. 【赤から】がフランチャイズ・ショー大阪に出展 – PR TIMES 
  7. コンビニ業界のM&A動向(2025年) – CINC CAPITAL 

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